アリー スター誕生(原題:Creed II)
あらすじ
音楽業界でスターになることを夢見ながらも、自分に自信がなく、周囲からは容姿も否定されるアリーは、小さなバーで細々と歌いながら日々を過ごしていた。そんな彼女はある日、世界的ロックスターのジャクソンに見いだされ、等身大の自分のままでショービジネスの世界に飛び込んでいくが……。(映画.comから)
スタッフ
監督 ブラッドリー・クーパー
製作 ビル・ガーバー、ジョン・ピータース、ブラッドリー・クーパー、トッド・フィリップス、リネット・ハウエル・テイラー
製作総指揮 ラビ・メータ、ベイジル・イバニク、ニーハ・カイケンダール、スー・クロール、マイケル・ラピーノ、ヘザー・パリー
脚本 エリック・ロス、ウィル・フェッターズ、ブラッドリー・クーパー
撮影 マシュー・リバティーク
美術 カレン・マーフィ
衣装 エリン・ベナッチ
編集 ジェイ・キャシディ
キャスト
レディー・ガガ:アリー
ブラッドリー・クーパー:ジャクソン・メイン
アンドリュー・ダイス・クレイ:ロレンツォ
デイブ・チャペル:ジョージ・“ヌードルス”・ストーン
サム・エリオット:ボビー
アンソニー・ラモス:ラモン
ラフィ・ガブロン:レズ・ガヴロン
ルーカス・ネルソン:ギタリスト
予告編
感想・レビュー(ネタバレあり)
レディ・ガガ主演の音楽映画でオスカー最有力!なんて言われると、レディ・ガガにさほど興味のない自分でも見ないわけにはいかないということで、『クリード 炎の宿敵』を観た後にハシゴで観賞してきました。
内容としては、レディ・ガガ演じる主人公アリーが、ブラッドリー・クーパー演じるジャックに見出される形でスターとなる歌あり恋愛ありのシンデレラストーリーと思っていたのですが、予想外に悲劇的な展開を迎えるので注意といった感じ。本作はこれまでに3回も映画化されてきた物語のリメイクらしいのですが、自分はどの作品も一度も観たことがなかったので、新鮮な気持ちで観れました。
ただ、正直なところ観ていてかなりしんどい映画でした。というのも、主人公であるアリーに全く共感できないというのが大きい。アルコールやドラッグに溺れるジャックを献身的な愛で支える健気な女性でもあるのだけれど、その原因を自分が作っているということへの無自覚さが観ていて非常にやるせない。たしかに、ジャックの自死という結末は彼の精神的な弱さによる部分も大きいと思うのだけど、彼をあそこまで追い込んだ原因はアリーがスターとなることで彼女の音楽が変わってしまったことへの絶望が大きなウエイトを占めていると思う。
そもそもジャックは彼女の歌に惚れ込んでいたわけで、一番の魅力は彼女の音楽だといえる。それなのにプロデューサーに言われるがまま世俗的なポップスを歌いダンスを踊る彼女は、ジャックには見るに堪えなかったはず。その不安や苛立ちは、彼女が大きく写る巨大な看板の前での髪色を変えたアリーと会話や、バスルームでの喧嘩の際にも売りことばとして表出する。さらには、グラミー賞のスピーチの際にはピアノを離れたことで成功できたとプロデューサーに感謝している始末。これはジャックの気持ちを考えると本当に救いようがない。彼はアリーの音の捉え方を愛していたのだから。
それでも、ジャックとアリーはお互いを愛していたというのが一番の問題で、この矛盾によって彼が苦しんだことは想像に難くない。アリーは、ジャックが酒に溺れる理由を深く考えもせず、スターとなる自分への嫉妬や彼のキャリアの低迷にあると考えていたように思う。自分の音楽に原因があるとは考えもしていなかっただろう。ジャックの死と彼の残した歌によって彼女が自分の歌を取り戻す展開は皮肉としか言いようがないなと。
ただ、ストーリーに関しては気分が悪くなる展開だったけれど、決してキャスト陣が悪かったわけではなくて。アリーは悪い意味で今どき女子でウンザリだけど、レディ・ガガが悪かったわけではないし、ジャックを演じたブラッドリー・クーパーは演奏や歌も含めて素晴らしかったと思う。ジャックのインチキなものに耐えられないホールデン少年(『ライ麦畑でつかまえて』)を彷彿とさせるような純粋なキャラクターは、人間的な弱さも含めて非常に魅力的で、本作をアリーではなく彼の物語といっても差し支えがないように思う。父親や兄との関係性などのバックグラウンドも含めて深みのあるキャラクターで、監督をこなしながら演じきったブラッドリー・クーパーの評価はうなぎ上り。
評価
管理人の評価:★★★☆(3.5/5.0)
映画としての出来は上々だと思う。ただ、自分が極度の音楽好きで少し偏った見方をしてしまったせいもあり、観ていてうんざりしてしまった。キラキラしたシンデレラストーリーのような売り出し方をされているけれど、本当に皮肉たっぷりな物語だと思うので、プロモーションに騙されないよう気をつけてほしい。
純粋なジャックを無神経なアリーが痛めつける悪趣味な映画と思ってみれば、意外と楽しめるのかもしれないとか思ったり。
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