【感想】アンダー・ザ・シルバーレイク(2018年)

【感想】アンダー・ザ・シルバーレイク(2018年)

アンダー・ザ・シルバーレイク(原題:Under the Silver Lake)

ポスター画像

あらすじ

セレブやアーティストたちが暮らすロサンゼルスの街シルバーレイク。ゲームや都市伝説を愛するオタク青年サムは、隣に住む美女サラに恋をするが、彼女は突然失踪してしまう。サラの行方を捜すうちに、いつしかサムは街の裏側に潜む陰謀に巻き込まれていく。(映画.comから)

スタッフ・キャスト

スタッフ
監督 デビッド・ロバート・ミッチェル
製作 マイケル・デ・ルカ、クリス・ベンダー、ジェイク・ワイナー、アデル・ロマンスキー、デビッド・ロバート・ミッチェル
製作総指揮 ダニエル・レイニー、ジェフリー・コンビッツ、ジェフ・ジョフレイ、キャンディス・アベラ・ミカティ、アラン・パオ、ルーク・ダニエルズ、トッド・レミス、デビッド・モスコー
脚本 デビッド・ロバート・ミッチェル
撮影 マイケル・ジオラキス
美術 マイケル・T・ペリー
衣装 キャロライン・エスリン=シェイファー
編集 フリオ・C・ペレス4世
音楽 ディザスターピース
音楽監修 マイケル・ターナー

キャスト
アンドリュー・ガーフィールド:サム
ライリー・キーオ:サラ
トファー・グレイス:サムの友達
ゾーシャ・マメット:トロイ
キャリー・ヘルナンデス:ミリセント・セヴェンス
パトリック・フィッシュラー:コミック・マン
グレース・バン・パタン:バルーン・ガール
ジミ・シンプソン:アレン

予告編

感想・レビュー(ネタバレあり)

本作に関しては、予告編を見てもどういう映画なのかまったく分からなかったことで逆に興味を惹かれていて、デビッド・ロバート・ミッチェル監督の前作『イット・フォローズ』が風変わりなホラーで面白かったこともあり、観賞を決定。公開翌日になんばパークスシネマで観賞してきました。かなりの問題作でしたよ。

さて内容はというと、アンドリュー・ガーフィールド演じる主人公のサムがロサンゼルスを舞台に消えた女性の謎を追うというのが本筋なのだが、いろんな映画のオマージュやメタファーが過剰すぎるということもあって、正直なところ大半の人の感想は「さっぱりわからん!」という感じなんじゃないでしょうか。予告編を見てよくわからんと思ったわけですけど、本編を見ても相変わらずわけがわからないという困った映画です。

ただ、物語中の理解しがたい出来事を妄想の一言で片付けてしまうのはあまりにナンセンスだと思うので、今回は自分の頭の中の整理も兼ねて、物語におけるメタファーやアナロジーについて、自分なりの解釈を少し書いておこうかと思います。登場するポップカルチャーやオマージュについては、自分より断然詳しい人がたくさんいると思うので、ほかの人の解説を参考にしてくださいな。

ロサンゼルス

まず本作で重要なのが、作品の舞台がロサンゼルスである点です。ロサンゼルスといえばアメリカのカルチャーの中心といっても過言ではない街で、ハリウッド的なアメリカンドリームを夢見る人たちが多く暮らしています。多くのセレブやアーティストたちが暮らす反面、夢を叶えられずにくすぶっている人間も多く抱えるという、ある種の二面性を持つ街といえます。

また、”富裕層”と”貧困層”のほかにも様々な二面性のモチーフが登場することも特徴です。それは”現実”と”虚構”や”上ること”と”下ること”であったり考えだすとキリがないほどです。あらゆる物事の二面性が強調して表現されます。

消えた美女

サムが一目惚れするが翌日には消えてしまう女性サラは、言うなれば”夢”や”希望”の象徴であると考えられます。ブロンドヘアーに巨乳で美人というアメリカのステレオタイプともいえる外見も、そういった一面から考えると非常に納得ができるんじゃないでしょうか。ベランダから眺めているだけだった出会い、抱けそうになるのに抱けなくて翌日には消えてしまうという展開も、サラを”夢”や”希望”に置き換えて考えてみると、物語で起こる出来事の意味がぐっとわかりやすくなりますね。ロサンゼルスで夢を叶えられずにいる鬱屈とした青年が”夢”に手を伸ばしたけれど、それは叶うことなく消えてしまうといった感じです。

ソングライターの老人

サラが消えてからの展開は、一度手に入れかけた”夢”を諦めきれないサムの悪あがきです。様々なことに因縁をつけて、自分が夢を掴めない理由を陰謀論のように考え始めます。その途中で、自分の敬愛する音楽や映画などのカルチャーが、結局はセレブたちによる作り物だということに気づき苦悩することになります。作中では、謎のソングライターがNirvanaの”Smells Like Teen Spirit”をピアノで演奏し、それを受け入れられないサムが彼を殴殺する場面(名シーン!)がそれですね。

また、カルト的な人気を持つバンドのボーカルの排泄物をわざわざ映したのも、ポップカルチャーの綺麗な部分だけじゃなく汚い部分を見せるためでしょう。これもまた二面性ですね。この辺の描写については、監督のインタビューで自身の監督作である『アメリカン・スリープオーバー』をセルフオマージュしたことについて話していた内容にも繋がるんじゃないでしょうか。

『アメリカン・スリープオーバー』という作品は、ある種正直で、人生における可愛らしい時代を描いた映画なんだ。それをフィクション版にして映画の中で使うことで、「ハリウッドというのは、そういう美しいものも醜くできるんだよ」というものを見せるのに効果的だと思って使ったよ。すごく誠実で、可愛らしいものでさえ堕落させてしまうハリウッドの部分を表したいなと。(参照:インタビュー記事

フクロウのキス

ソングライターを殺害した後に、フクロウの仮面を被った裸の女性(フクロウのキス)がサムを襲いに来ますが、この変態女は”絶望”や”死”のメタファーだと考えられます。自殺したと言われていた人物の家に現れていたことからも想像できますし、監督の前作『イット・フォローズ』の追いかけて来るバケモノ(こいつもなぜか全裸!)も”老い”や”死”のメタファーだったことからも、おそらくこの認識で間違ってないはず。ポップカルチャーの汚い部分を見せられた結果、サムは自殺を考えるまでに苦悩していたということでしょう。

まとめ

すごく乱暴にこの映画をまとめてしまうと、「夢と希望の街ロサンゼルスで夢を叶えられずに暮らす鬱屈した人間が、二面性の境界で苦悩する物語」という感じになるのではないでしょうか。正直なところ、納得のいく解釈ができたいない箇所(犬殺しって結局なんだったの?とか)も多いのですが、ほかの人が解き明かすのを待つことにします笑

最終的にはサラとも再会できずに家を追い出されて向かいのおばさんの部屋に転がり込みましたが、家賃滞納などの現実を見ずに夢を追いかけた結果と考えると、さもありなんという気もします。サムがすごい冷めた目で自分の元いた部屋を眺めているのを見ると、ちょっとやるせなくもありますが。。。

評価

管理人の評価:★★★☆(3.5/5.0)

作品の性質上すごく評価が難しいのですが、とりあえず万人受けはしないこともあってこの評価。個人的には、観ているときより観終わってあれこれ考えている時の方が楽しかったり。自分も内容を全て理解したとは言い難いのですが、とにかく不思議な魅力を持った映画だなと。

今回はあまり触れていませんが、ヒッチコックなど昔の映画のオマージュだらけなので、その辺に詳しい人はもっと楽しめるかもです。ただ、類似作品っていうとその辺の映画よりもむしろ村上春樹の長篇小説とかの気がします。

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